酒販免許と自動販売機

自販機でお酒を売りたい

久しぶりに、自販機でお酒を売りたいという問合せがきた。
自販機でお酒を売りたいケースではどのようにすれば良いかという話題をとりあげるところだが、少しその前に脱線をしたい。というのも、実は、私はお酒の自販機とは少々縁がある。1980年、電機メーカーで社会人生活をスタートさせた。その会社の弱電部門の主力製品が自動販売機で、ビールメーカーを担当していた時期がある。
自販機で酒類を売るためにはどうすれば良いのかという話は後ほどするとして、酒類販売の自販機にかかわったときの想い出に少し触れておくとする。

ビール自販機全盛期

お酒の自動販売機

私が担当していた時期は、丁度、サントリーが松田聖子の Sweet memories でペンギンキャラクターの生ビールで攻勢をかける直前から、アサヒビールがスーパードライで盛り返えしをかけた前の年、CIでデザインを一新した直後までの約3年間である。

当時はお酒を買うのは酒屋と決まっていた。すでにコンビニはあったが、もちろんお酒は買えない。強い参入障壁に守られた酒屋の立場は強く、逆にビールメーカーは酒屋に頭があがらなかった。そこで、熾烈な陣取り合戦が行われ、自動販売機はまさにそのための飛び道具であった。

自販機展開の仕組み

当時、ビールの容器は多様化していて、自動販売機も大型化していった。一番大きなものは横幅2mだったと記憶している。各ビールメーカーは自販機メーカーと仕様を決め、キリンの自販機、サッポロの自販機として市場に展開される。

メーカーが自社製自販機を採用し展開する最大の目的は、酒屋の取扱シェアの獲得である。つまりOEMで自販機を機械メーカーに発注しているようなイメージである。ビール4社(沖縄限定で販売されていたオリオンビールをいれると5社になるが、私たちが扱っていたのは、キリン、サッポロ、アサヒ、サントリーの主要4社である)のうち、一社しか扱っていない酒屋はほとんどなく、少なくとも2社は取扱がある。大型の自動販売機をおくことができると、自販機のラインナップされた商品を小売店に押し込むことができる。酒屋は自販機で販売している商品を切らすわけにはいかないので、必然的に設置した自販機の取扱商品を中心に仕入れることになり、シェア確保に繋がるというわけだ。

自販機合戦

そこで、各社の押し込み合戦が行われる。自動販売機自体は酒屋が買うのだが、何ケースものビールを無償で提供し、事実上酒屋の負担をほぼゼロにしてでも自販機設置をすすめたのだ。ビールメーカーの社員はビールのことはわかるが機械のことはわからない。
そこで、機械メーカーの営業が同行して説明に行く。夏に備えて、クリスマスあたりから動き出すのだが、真冬の雪の降る中担当エリアの隅々までメーカーの営業と車で回る生活を3年していたわけだ。

規制緩和で衰退する自販機

自動販売機で何を買おうか迷っている子ども

強い参入障壁に守られた酒屋だが、それからわずか数年後に規制緩和が始まり、2003年完全に自由化された。
すでに私は退社していたがビール自販機は次第にコンビニにとって変わられた。今は、コンビニ、スーパー、ネットと気軽にお酒を買うことができる。販売だけでなく、製造についても規制が緩和されている。

多くのクラフトビールが誕生し、大手メーカー以外にも様々なビールが楽しめる。条件さえクリアすれば、誰でもお酒の販売が可能である。私の事務所でも毎月必ず数件の申請を行っている。規制緩和で広がった業務と言ってもよい。

自販機で酒類を販売するにはどうすれば良い?

さて、自販機で酒類を販売するにはどうすれば良いのか。
すでに、説明済みだが、現在、屋外におく酒類の自動販売機は、酒販免許を持っている店舗が、その敷地に限り設置できる。つまり、一般小売免許を取得するのだが、ひとつ付け加える点がある。
行政は、年齢確認ができる自販機以外は撤廃をすすめているが、長期的には全廃を検討している。

つまり、遅かれ速かれ、自販機でお酒を買えることはなくなるということである。

たばこ屋さんや酒屋さんにお使いを頼まれ、お釣りをお小遣いにもらっていた経験がある世代としては淋しくもあるが、これも時代の流れである。
ということで、懐かしいCM映像でも見ながら一杯やることとします。

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