飲食店の二毛作

飲食店の二毛作とは

時間帯によって別の業態で経営する飲食店を「二毛作」と呼ぶことがある。店舗の空き時間を有効活用しようという試みで、最近注目されつつあるが、実は、けっこう昔からある事業形態である。昔よく見かけたのは、昼は喫茶店、夜はスナックだ。最近だと、昼間はCafé、夜はバーなんていう組み合わせが多い。昼間はラーメン屋、夜は居酒屋なんていう店もあった。私が若い頃よく行った店は、昼間蕎麦屋、夜は鮨屋だった。二毛作も、昼夜同じ経営者という場合と、経営者が違う場合がある。特に、経営者が違う場合には課題が多い。私のところにも時折相談があるが、飲食店の二毛作はけっこうもめ事がおきやすいのだ。そのあたりの話をしてみよう。

ラーメン屋さんと居酒屋さんの二毛作

同一経営者の場合

1つのお店で、朝晩違う業態で営業したいというのは、事業の範囲をどう決めるかという経営上の話である。ただ、賃貸の場合、「喫茶店をするというから貸したのに、ラーメン屋やるなんて聞いてない」というような話がオーナーからでてくる可能性はある。特に、軽飲食はOKだが、重飲食はNGという物件は要注意だ。まずは、大家の理解は得ておく必用がある。だが、大家からの承諾さえ得られれば、経営者自身の問題なので、法律的なややこしさはさほどない。問題は、昼と夜の経営者が違う場合である。二人の経営者が店を使うというのは、時間貸しばかりではない。スナックなどでよくやるのは曜日による交替制だ。曜日単位でママが変わり、それぞれのお客さんを呼ぶ。お客さんがヒトについている業種なので、こういうシステムが可能になる。

経営者が違うとどうなる

賃貸で夜だけの営業をしている洋風居酒屋があったとする。「昼間、高級ハンバーグ店をやりたいので、お店を貸して欲しい」という方がでてきた。実際、昼間はまったく使わないので、家賃の補填にもなるし、使ってもらおうとおもう。さて、どんな問題が起こりうるのかを考えてみようというわけだ。

どんなやり方があるのか

まず、もともとの賃貸契約をどうするのかという問題がある。ただ、大家が昼と夜をわけて賃貸するということは考えづらい。次に、昼だけ転貸(又貸し)という方法も考えられる。ただし、転貸するためには大家の同意が必用で、こちらも、通常、大家はOKすることはない。この方法も除外して良いだろう。オーナーとの関係は考えずにできる方法で何が起こりうるかということである。

悩んでいるピクトグラム

雇用契約か、業務委託契約か

雇用契約

簡単な方法は、雇用契約を結んで従業員にしてしまうことである。しかし、雇用契約であれば社会保険もかかるし、最低賃金も適用される。この方法では、同一経営者の場合と同じになり、むしろ固定費が増えることになる。他人が持ち込んだ企画で赤字になったのではたまったものでは無い。

業務委託契約

次に、業務委託契約という方法がある。昼の時間の営業を任せるのだ。この場合、業務委託費用を決めなければならない。固定の金額で決めてしまうと、結局その費用を持ち出すことになりかねない。できれば、歩合で売上から費用をもらいたいと考えるのが普通だ。ただ、こちらも、売上があがらなければ、光熱費など赤字になることもある。

結局、このケースで一番多く使われるのは、使用料を取って使わせるが、対外的には同一の経営者を装うという方法である。

保健所の許可はどうするのか

このケースでは、保健所の許可をどうするだろうか。保健所は、飲食店営業許可について賃貸借契約書の提出を求めていないので、昼夜、別々に飲食店許可を申請するということもできなくはない。保健所は薦めないが、実際に許可もされている。ただし、なにかあったとき、具体的には食中毒がでたときなどは、別店舗とはみなされない。つまり、両方営業停止である。もっとも、対外的には同一店舗とするなら、どちらが持っていても同じことで、なにかあれば両方営業停止である。

お客さんにとっては同じ店?!

中身をどうかえようが、外から見れば同じ経営の店舗であると思われる可能性がたかい。昼間のお客さんのクレームを夜聞かされることもあるだろう。昼間のメニューがないと怒られることもあるかもしれない。実際、そういうトラブルを見たことがある。

最大の問題はオーナー同士の軋轢

使用料をとって同一経営者を装う場合、冷蔵庫なども同じものを利用することが多い。その場合、このビールはだれのものか?この食材はどちらものか?という問題が必ずおこる。前日の清掃が不十分であるとか、キッチンの使い方が汚いといった問題は時間が経てばたつほど根深くなる。実際に店舗を契約している側の方が、イニシアチブをとることになるのだろうが、もう一方は使用料を払う側で客という側面もある。

お互いの関係がうまく成立するのであれば、費用を分け合う相補効果とお互いの宣伝による相乗効果があるのも確かなのだが、人間関係のもつれくらい大変なものはない。

その昔、ランチに蕎麦をいただいた店で、夜寿司をつまんだ店が懐かしいが、その店も長くは続かなかった。よくよく考え、少々面倒でも、最初に細かく約束事を決め、お互いそれを守るということがないと難しい営業スタイルである。

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