ゾンビに会った!〜お酒の免許のはなしです、、
「ゾンビに会った!」といっても、お酒の免許の話。
お酒を売るための免許は大きく分けて、卸売りと小売にわかれる。私たちが普段、お酒を購入するのはスーパー、コンビニ、酒屋さんなどだが、こういったお店は一般小売免許を取得する。小売免許にはもう一つ、通販専用の免許というのがある。これを通販小売免許といって、それぞれできることが違う。
通販小売免許は一般小売免許とどう違う
一般小売はいわゆる通常の酒屋さんの免許で、どんなお酒でも販売できる。しかし、電話注文などの場合、同じ都道府県内からの注文しかうけることができない。
一方、通販小売では、扱える商品に制限がある。年間3千㎘以上生産するメーカーの商品は取り扱えない、3千㎘というのは相当な量で、ナショナルブランドを想像してもらえばよい。そのかわり、電話、ファックス、メール、HP、対面でなければ、日本国内どこから注文をとっても問題はない。日本国内とわざわざ書いたのは、最近では越境サイトというものがができてきたからだ。
海外に売るときは卸免許
それでは、越境サイトで海外に日本酒を売りたいという場合にはどういう免許がいるのだろうか。
この場合、輸出卸免許という、輸出専門の卸免許を取得するように指導される。「海外になるとその国の法律がどうなっているかまではわからないので、国外に出すなら、一律、卸免許を取得してください。」というのが、税務署の見解だ。
整理すると
一般小売免許
同一都道府県/
商品制限無し
通販小売
日本全国/3千㎘以上の生産者の酒類は扱えない
卸免許
海外に輸出する場合
ということになる。
ゾンビ免許との出会い
さて、今回のお問合せは、すでに小売店免許をもっている酒屋さんが、海外のレストランへ日本酒を売りたいという相談であった。さきほど整理した条件から判断すると、当然、輸出卸の免許が必要なはずなのだ。ところが、その方は、「税務署でこのまま輸出して良いと言われた」という。「そんなバカな」と一瞬思ったのだが、「まてよ」と思いついたのがゾンビ免許だ。
ゾンビ免許ってなんだ
今のような通信販売と一般小売免許がわかれたのは、1989年、昭和64年、平成元年のこと。それまでは小売免許といえば、いわゆる酒屋さんの免許であった。その免許には、「小売」であること以外には制限がない。つまり、1989年以前に取得された小売免許には、まず、都道府県という場所的な制限がない。都道府県外はもちろん、海外であっても、小売は小売である。
さらに、通販免許のような年間3千㎘という制限もない。何を、どれだけ売ろうが小売は小売である。この免許を、ちまたでは"ゾンビ免許"という。代々営んできた酒屋さんの免許をゾンビ呼ばわりするのは心苦しいので、ここからはプレミアム免許としておく。
プレミアム免許があるから通販でビールが買える
許認可というのは、承継することができない。会社の合併、分割などの事業再編をするとき、個人事業主が世代交代をするときには、改めて許可をとりなおさなければならない。逆に言えば、許可をもっている会社をそのまま買収してしまえば、かつての制限のない免許を手に入れられるということになる。通信販売で大手メーカーのビールが買えるのは、プレミアム免許のおかげなのだ。
おかげで、冷えたビールを配達してもらって、花見も花火も楽しめる、コロナ開けの浅草である。