メリーかマリーかメアリーか

外国人の名前の話だ

外国人が中長期滞在で日本に入ってくると、つまり住みはじめると、住民票ができあがる。住民票ができるということは、住民基本台帳に名前がのる。そこに記載される名前は、日本人なら戸籍謄本だ。それでは外国人の場合、何に基づいて記載されるかというと、入国時に発効される在留カードという免許証大のカードである。このカードには、一部の例外を除いて、アルファベット表記しかない。

フリガナ!!

アルファベットのブロック。外国人の名前に日本語のフリガナを振るのはちょっと大変。

さて、入国し、住む家が決まると区役所、市役所に行って転入届をだすのだが、仮に、MARY LUTHERという人がいたとする。住民票には、在留カードに記載されたとおり"MARY LUTHER"と記載される。つまりアルファベットで記載されるのだが、実はフリガナというやっかいものがある。外国人の多くは、そもそも日本語が書けない。そこでご丁寧に自治体の方がフリガナを振ってくれたりするのだが、これがあとで面倒なことになる。フリガナはあくまで自治体が便宜的に使用しているにすぎないのだが、一度住民基本台帳にのってしまうと面倒なのだ。その面倒な話である。

区役所の方は、彼女の発音から「マリー」と聞き取ったようだ。住民基本台帳には「マリー」と記載され、健康保険もフリガナが必用なので、保険証には区役所の聞き取った「マリー」が記載された。

そんな外国人から法人設立を頼まれた

定款の役員や発起人の氏名は印鑑証明書の表記通り記載しなくてはならない。印鑑証明書にカタカナ表記があれば、そのとおりに記載するから問題ないのだが、記載がないときはカタカナに直さなければならない。会社名はアルファベットで登記できるのに、個人名はできないのだ。印鑑証明書にカタカナ表記があるかどうかは、住民票にあえてカタカナ表記を記載したかどうかである。つまり入国時の転入届時にカタカナ表記を登録すれば、印鑑証明書にも住民票にもカタカナ表記がのる。問題がなさそうにも思えるのだが、ここでフリガナの問題がでてくる。ややこしいのだが、カタカナ表記とフリガナは別物で、住民票にはフリガナは記載されない。カタカナの記載がないので、聞き取って強引にカタカナ表記にするしかない。そこで私が聞き取った名前は「メアリー」だった。さて、これで登記は無事に完了するのだが、困ったことがおこるのはそのあとである。

次は銀行

日本語の契約書と判子。

この方は、個人で銀行に口座を作っていた。開設時の本人確認は在留カードで行う。つまりアルファベットしか書かれていない。銀行でもフリガナが必用なのだが、このときに、フリガナを健康保険証を参考にしてマリーとふった。ちなみに、その銀行が言うには、銀行の使うフリガナも内部で利用するために便宜的にふるものだそうだ。さて、会社の履歴事項全部証明書をもって、法人口座を作ろうとしたら、履歴事項全部証明書に記載されたカタカナ表記と銀行に登録されたフリガナが違うのだ。なんと、フリガナのせいで本人相違ということになってしまった。保険証はこのケースでは本人証明とは関係がないし、銀行自身も行内の便宜としてフリガナを振っているといっているにもかかわらずだ。結局、根拠が保険証なので、これを変えてくれれば変えるという。かなり不毛なやりとりが続いた。

じゃぁ、どうする!

住民基本台帳のフリガナを直すか、登記をなおすかして、どちらかに揃えるしかない。保険証のフリガナを変えることは可能ではある。住民基本台帳のフリガナを変更してもらえば良い。費用はかからない。一方、登記は、錯誤を主張して校正の登記をするか、しらっと変更の登記をするかで、いずれにしても、こちらはお金がかかる。結局、このときはお金をかけて変更登記をした。すでに入国して数年経っており、他にも、こんなことがおきると嫌なので、住民基本台帳は活かしたのだ。

アルファベットにフリガナを振る違和感!

Mary Lutherという英語名は、日本人にはメアリー・ルーサー、メリー・ルーサー、マリー・ルーサー、どう聞こえるかは微妙である。さらに、Lutherという名字も、ドイツ語ならルッターともルターとも聞こえるだろう。だから、アルファベットにフリガナというのわからなくはないのだが、それでも表音文字にフリガナを振る違和感は残る。戸籍謄本にもフリガナが記載されるようだ。結局、漢字もアルファベットも外国語ということで納得することにした。

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