メルカリでお酒を売っても良いか?フリマ・オークションでお酒を売る〜其の壱

メルカリ、ヤフオクなど、ネット上のフリマやオークションが盛んだ。素人でも不要なものを簡単に処分できる便利なプラットフォームである。実は、ある方からお礼でいただいたⅠ本2万円以上する日本酒の4合瓶がある。もちろんやましいものではない。ところが私はワイン党である。ワインしか飲まない。どんなに良い日本酒も、私の家にあってはただただ劣化していくだけなのだ。実は、ほかにも、ウィスキーやクラフトビールなどいくつか余り物がある。そこで、少々不義理かなと思いつつ、人からの頂き物のお酒を、メルカリ、ヤフオクで売ってもよいのだろうかという話である。

商売をするためには様々な法律の規制がある。素人がフリマやオークションを利用するときに、これらの規制がどこまで及ぶのかについて考えてみようというわけだ。まずお酒を売るのだから、酒販免許が必用なはずである。そして、頻繁に取り上げられるのが、古物商という、中古品の取引をするための許可である。まずは、その二つの法律から考えてみる。

お酒をメルカリで売るには古物商の免許がいる?

古物商許可証。古物営業法に定められたものを売買する際には許可が必要。
最初に古物商について考えてみる。古物商の免許については、古物営業法という法律に定められている。中古品などの売買を規制しているのだが、ここで大事なのは、売買であり、売ることだけではなく、買うことも規制しているということだ。なぜ売買を規制するかといえば、規制の目的が、盗品をみつけ、盗まれた人にはやく返してあげるためだからである。そのため、仕入れの段階から規制が必用ということだろう。プロならちゃんと見つけろということだ。

(目的)第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。

古物とはなんだ

では、古物とはなんだろう。古物営業法が定めている「古物」には三種類ある。

  1. 一度使ったもの、つまり中古品。
  2. 使われてはいなけれど使われるために取引され、未使用のもの、つまり新古品。
  3. この新古品に手を加えたもの。改造などをしたバイクや車などはこれにあたる。

さて、お酒はどうかである。これだけ読むと、「使われてはいなけれど使われるために取引され、未使用のもの」にあたり、お酒も対象になるように思われる。

(定義)第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。

しかし、もっと具体的に何が古物かというのは、さらに、第2条の括弧書きに記載がある。条文には、美術品、商品券や切手などがあげられているが、大事なのはそのあとで、「その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物」である。つまり、法律では定めないけれど、政令で指定しますよということで、政令では、車、バイク、自転車、本、機械類など13品目が定められている。この13品目が古物営業法の規制の対象である。そして、13種類のなかにお酒の文字はない。店頭に放置しておけば、あっというまに盗まれそうな、百万を超えるような高級なウィスキーも、ブランデーも、ワインも古物としては扱われないのである。つまり、お酒を売るためには古物商の免許は必用ない

お酒を売るには免許がいる。

お酒を販売するには酒販免許が必要
次に酒類販売免許だ。お酒の販売免許というのは、大きくわけて二つに分かれる。小売免許と卸免許だ、違いは売る相手が酒販免許を持っているかどうかだ。一般消費者に売るための免許は小売免許だ。よく誤解されるのだが、飲食店に卸すのも小売免許だ。飲食店は、大量に消費するし、業務のために仕入れるのだが、酒税法9条のただしがきの後段にあるように、あくまでその場で消費するためだけに仕入れるので、酒類販売免許の例外である。

第九条 酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類製造者がその製造免許を受けた製造場においてする酒類(当該製造場について第七条第一項の規定により製造免許を受けた酒類と同一の品目の酒類及び第四十四条第一項の承認を受けた酒類に限る。)の販売業及び酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。

例外はさておいて、一般消費者に売るのだから、必用だとすれば小売免許のはずだ。小売免許は更に、一般小売と通販小売に分かれる。一般小売というのは店を構える、いわゆる酒屋さん、コンビニ、スーパーなどである。不思議かと思うかもしれないが、通常の小売店は都道府県をまたいで通販することができない。都道府県を超えて、電話、メール、ファックス、ホームページで注文を受けたければ通販小売免許を取得する必用がある。

メルカリ、ヤフオクも通信販売である。つまり、メルカリ、ヤフオクで販売するためにも通販免許が必用なのだろうか。この条文には、販売業、代理業、媒介業をしようとする者、つまり業としてお酒を売る人は、売ろうとする場所の税務署から免許をうけなければならないと書かれている。別に、私は酒屋さんになりたいわけではない。ということは、自分が何年か前に買ったお酒、人からもらったお酒を、もう飲む予定もないからフリマで誰かに安く譲ってしまおうというのであれば免許はいらないはずである。たぶん、一本、二本レベルならそれで良いだろう。

それでは、業とはなんだろう。どれくらい売ったら業になるのか。私の部屋にはそこそこの数の日本酒とウィスキーが余っている。これを一気に売ったらどうなるのか。このあたりをはっきりさせたいのだ。

次の記事「業ってなんだ」に続く 
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