業ってなんだ〜フリマ・オークションでお酒を売る〜其の弐

フリマ・オークションでお酒を売る 其の弐

私の部屋に転がっている日本酒、ウィスキー、クラフトビールをネットオークションで売って良いのか。ヤフオク、メルカリで自分自身のものを数点売るくらいなら問題とはならない。「業として」売るのでなれば、特に免許は必用がない。その点は、前回の記事「メルカリでお酒を売っても良いか?」ではっきりさせた。許認可系の法律には、この「業として」とか、営業といった表現が度々登場する。中古を扱う古物商、不動産を扱う宅建業、薬機法における薬の販売、風営法など、「業として」売買する、販売する、営む場合には免許が必用と書かれている。そうなると、どのような行為が業とみなされるのか気になるところである。つまりひとつ、ふたつの余ったお酒や、着なくなった服や使わなくなったバッグを人に譲っているレベルであれば問題はないのだろうが、どれくらいの量を、どのように扱ったら業になるのかである。

最近、酒販免許でよくある話

私の事務所では酒販免許の取得手続きをよく取り扱う
私の事務所は酒販免許の取得手続をよく取り扱う。最近、酒類免許をとりたいという方の中には、飲まないお酒を買い取って売りたいという方が少なからずいる。お酒の免許をとるためには、取引証明といって、「酒販免許をとったら、あなたのところと取引しますよ」という証明が必用である。この取引証明を既存の業者から発行してもらい添付して申請する。この証明書は、仕入れ先発行のもの、売り先発行のもの、両方必用なのだが、小売免許の場合は、売り先は一般顧客なので添付する必用がない。問題は、仕入れ先で、本来は必ずどこかの業者からもらわなければいけないのだが、持ち込まれた古いお酒を売るケースでは、仕入れ先は一般客なので仕入れ先からの取引証明は準備できない。そこで、その旨を記載して提出するのだが、税務署から必ず「一般客であっても、繰り返されるのであれば酒販免許を持っている必用がある」という指摘がある。持ち込んだ本人は「業」ではないと思っていても、税務署はそうは思っていない可能性があるということだ。それではどのような行為で、何本までなら良いのだろうかが気になる。

古物商の話

中古品の取引を規制する古物商も以下の様に規定している。

(許可)第三条 前条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

ここでは「営業であって」という表現になっている。営業、つまり業を営む場合には、免許がいる。それでは営業とはなんだ。

第二条2この法律において「古物営業」とは、次に掲げる営業をいう。
1古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの

古物営業の営業というのは、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」と規定されているが、これではループして、いつまでたっても答えにたどり着かないが、少なくとも、「業」として行うときは許可がいるのは間違い。実は、宅建業、薬機法も同じような表現で営業許可を規定している。それでは”業”ってなんだ!

業ってなんだ

”業”つまり営業許可でいうところの営業とはなんだ。何をもって営業とするのか。実は、営業が何かということを説明した法律は存在しない。しかし、法律の世界では明確な解釈がある。「利益を得る目的であること」「継続すること」「反復すること」、この3つの要件が揃うと営業であると解釈する。国税庁のホームページにも同じ解説がある。根拠になる条文はないが、商法の501条以降に、商行為と商人についての規定があり、「営業」という語が度々登場する。その類推から、「利益を得る目的であること」「継続する」「反復する」をもって営業としているのだろう。営業であれば商法が適用される。つまり、この3つの要件に合致すればプロとみなされる。

文言だけで、全てをカバーすることは不可能なので、一般にグレーゾーンといわれるあやふやな部分はどの法律にもある。そして、それを埋めるのが、解釈であり、裁判で争った結果である判例だ。それでは判例はどう言っているかだ。古い判例だが、改正前の古物商営業法という法律について争った最高裁判例がある。

古物商営業法六条にいわゆる営業とは、営利の目的で同条所定の行為を反覆継続して営む意思を以てなすことを指称するのである。それ故かゝる意思の下にたとえ一回でも同条所定の行為をなせば同条にいわゆる営業をなしたものというを妨げないのである。(最高裁昭和30(あ)3714)

回数は関係がなく、その意思があったのであれば1回でも営業であると判例は言っている。だとすると、私の部屋にあるお酒を全部売るとなると、「利益を得る目的であること」「継続すること」「反復すること」、この3つの要件をすべて満たしてしまう可能性があるではないか。もっと明確な基準はないのだろうか。

特定商取引法という法律がある

訪問販売や通信販売を帰省するために「特定商取引法」という法律がある
訪問販売や通信販売を規制するための「特定商取引に関する法律」、通称「特定商取引法」という法律がある。通信販売に関しては、広告、申込や引渡の方法などが規制されている。その規制の対象は、販売業者又は役務提供事業者で、ネットショップを開設するときなどは、「特定商取引法に基づく表記」で事業者名、支払方法などの記載が義務付けられている。

この法律でいうところの、販売業者又は役務提供事業者が、つまりは営業を行う者である。消費者庁による特定商取引ガイドというサイトに「インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン」が示されている。どらくらいの規模から業者として扱われるのかという基準が示されているのだが、例えば、CD、DVD、パソコンソフトなどは、同一の商品を一時点において3点以上出品している場合は業者として扱うとなっている。また、同じジャンルのもの、例えばブランド品、健康食品、チケット等を20件以上同時に扱っている場合も対象となる。すべての品目があげられているわけではないが、どうやら同じジャンルで20件、同一商品であれば3件というのが基準になりそうである。

ただし、ここで気をつけなければならないのは、一時的に取扱量が少なかったとしても「転売目的による仕入れ等を行わずに処分する頻度を超えて出品を繰り返している場合」というのは業者として認められる可能性があると記載されているので、それが自分のものであっても、数が多ければ業者として扱われる可能性があることになる。

出品者が販売業者に該当するかどうかについては、上記で例示されていないものも含め、個別事案ごとに客観的に判断されることに留意する必要がある。例えば、一時点における出品数が上記を下回っていても転売目的による仕入れ等を行わずに処分する頻度を超えて出品を繰り返している場合などは、販売業者に該当する可能性が高く、上記に該当しなければ販売業者でないとは限らない。(インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドラインより)

何をどれくらい扱ったら業とされるのか、この法律における基準が他の法律にも適用されるかどうかはわからないが、今のところ明確に数量が提示されているのは、このガイドラインくらいなので、とりあえずこの基準に従っていれば、仮に行政指導があっても、言い訳くらいはできそうである。言われてからやめるか、言われない範囲で気をつけるかは、私次第である。

仮に、行政が「あなたのやってることは営業である」と言ったして、「いや、これは営業じゃない」と争うことはできるのだが、最終的には、それぞれの事情と法律を照らし合わせて、司法が決めることになる。そこまで頑張ってもあまり意味がないとは思うが、グレーゾーンと言われる領域に関しては、十分注意した方が良いのはもちろんである。

ということで、半分はどこかの飲み会に持ち込むことにして、一杯やります(^_^;
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