契約書の想い出〜其の二

若い頃、契約書で何度も冷や汗をかいたはなしをした。
その中でも、本当に初歩的なミスの話だ。

海外の音源を日本でリリースする契約を結んだときのことだ。
契約書はすべて英語である。
日本語を読むとき以上に真剣に読んだ。

ところが、真剣になりすぎたのか、定型の条項を読み飛ばした。
具体的には、いわゆる裁判の管轄条項、紛争がおきたときの管轄裁判所をどこにするかという条項である。である。

The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon XXXXX District Court over any disputes arising out of or relating to this Agreement

アーティストが特定できてしまうといけないので、場所はXXXXで伏せ字にしたが、実際の場所は北欧のとある都市である。しかも"exclusive"、排他的条項である。
訴訟になったら北欧まで行かなければならない。被告地主義、つまり訴訟を提起する側が、相手方の所在地の裁判所に提起するように条項の修正を提案しておけばよいだけのことなのだが、それを忘れたわけだ。

結果的に、その音源は日本国内では日の目をみなかった。アドバンスを払ったものの、最後の最後でリリースには踏み切れなかった。

アドバンスさえ払えば、後はプレス数によるロイヤリティを払えば良いという契約で、リリースが義務付けられていたわけでもなかったので、訴訟になることもなかったが、もし、訴えられていたら北欧の弁護士を雇わなければいけなかったことになる。

今でも、思い出すとぞっとする。

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